発注者支援業務と民間では全く違う?勤務地・勤務時間などの違いを解説!
民間企業の工事業務と発注者支援業務では、勤務内容にさまざまな違いがあることを知っていますか?
今回は次の5つの違いをピックアップして紹介します。
- 勤務地の違い
- 勤務時間の違い
- 休日と残業の違い
- 担当工事の違い
- 実際の仕事内容の違い
特に休日や残業の違いなどは、事前に知っておきたいものですよね。
どちらがあなたの理想とする働き方と合っているか、確認しながらご欄ください!
目次
1. 発注者支援業務と民間の業務の違いについて
発注者支援業務と一口に言っても、発注者はさまざまですし、業務も複数あります。
そこで本記事では、発注者を”国土交通省”、業務を”工事監督者支援業務”に絞り、民間業者との比較をしていきます。
民間で工事を行っているゼネコンの”施工管理”と、国土交通省に携わる発注者支援業務の”工事監督支援業務”をイメージして、勤務内容の違いを理解していってください。
それでは、順に紹介していきます。
工事監督者支援業務とは
工事監督支援業務とは、発注者と受注者(施工者)の間に入り、工事の着工から引き渡しまで、全工程にわたって円滑な履行ができるよう支援する業務です。
主な業務としては、次のようなものがあります。
- 契約図書の内容の把握
- 施工計画書の受理
- 指定材料の確認
- 工事施工の立会
- 段階確認
- 施工体制の把握
- 工事施工状況の把握
- 改造請求書等に関する資料の提出
- 支給材料および貸与品の確認
- 関連工事との調整
- 地元対応
- 関係機関との協議・調整
- 事故などに対する処置
- 契約変更にかかる対応・報告
- 完成検査
基本的には工事が施工計画・図面通りに進められているかを確認することがメインとなります。
そのため、変更などが起こった際は速やかに対応することも必要とされます。
2. 発注者支援業務と民間の勤務地の違い
民間企業の勤務地は、工事現場の現場事務所です。
工期の間は勤務地が変わることはなく、特定の現場に出勤し、働く流れとなります。
勤務地が別の現場へ変わるのは、工事が終わって竣工してからです。
工期は土木工事の場合だと数ヶ月〜1年が最も多く、たまに2〜3年の長期という場合もあります。
一方、発注者支援業務の勤務地は出張所です。
出張所とは、工事を管理監督する1番先端の事務所で、要するに国土交通省の事務所のことを指します。
勤務パターンとしては、朝に出張所へ出勤し、そこから担当現場へ出向、終わり次第また出張所へ戻ってくるという流れになります。
また、発注者支援業務の場合、工事監督業務における工期は2〜3年が一般的です。
たとえば2年契約であれば、契約が満期になるまでは同じ勤務地(出張所)に通い続けることになります。
現場事務所とは
現場事務所とは工事を管理するために、敷地内に建てられる仮設の事務所のことです。
プレハブやユニットハウスの形式で建てられることが一般的ですが、敷地が狭い場合は近所の適当な建物を事務所として充てることもあります。
中にはデスクやパソコン、電話などの備品が揃っており、イメージとしては職員がデスクワークをするためのオフィスと考えて良いでしょう。
また現場で作業をする職人の休憩所として併用されていることもあります。
工期とは
工期とは工事をスタートしてから完成までの期間のことです。
工期は工事物の品質・コストにも大きく関わるため、施工にあたっては非常に重視されている要素です。
公共工事においては、設計図に規定されている品質の工事物を施工するために必要な工期・コストを発注者があらかじめ設定し、入札時に公告しています。
また働き方改革をきっかけに、工期の適正化がより厳格となりました。
よって現場作業者の休日や、工事の実施に必要な準備期間、天候などのやむを得ない事由なども考慮した上での期間設定が求められています。
建設資材や労働者確保のため、実工期を柔軟に設定できる余裕機関制度も設けられるようになりました。
竣工とは
竣工とは、工事が完了したことを意味する言葉です。
この後、施工計画書や図面通りに工事が完了できているかの確認を経て、引き渡しという流れになります。
工事完了を表す同じ意味合いの言葉としては”竣功(しゅんこう)”、”落成(らくせい)”、”竣成(しゅんせい)”などがあります。
3. 発注者支援業務と民間の勤務時間の違い
民間企業の勤務時間は8時〜17時を定時としているところが一般的です。
中でも8時から朝礼を始める企業が多いため、朝は7時半〜8時の間に出勤する人が多いです。
これは土木系でも建築系でも違いはありません。
自主的に早く出勤する人もいますが、そういったケースを除けば、やはり7時半〜8時の出勤が多い傾向にあります。
終業時間は17時までとなっていますが、実態は現場によって異なります。
現場の忙しさによっては終業が20時といった場合もあるでしょう。
発注者支援業務の場合は、一般的に8時30分〜17時15分が定時とされています。
こちらも自主的に早く出勤する場合を除けば、8時過ぎ頃に出勤するパターンが一般的です。
終業時間は17時15分までとなっていますが、実際のところは19時終業が平均的かと思います。
4. 発注者支援業務と民間の休日・残業の違い
まず休日についてですが、民間企業においても発注者支援業務においても、労働基準法や36協定が適用されることに変わりはありません。
よって、”1日8時間労働”および”1週間に40時間まで”というルールは同じです。
それから民間企業、発注者支援業務ともに就業規則上は”土日祝休み”をしているところが一般的かと思います。
ただ実際のところ、民間企業では土曜日に休日出勤するというケースも少なくありません。
その点、発注者支援業務は休日出勤の割合はほぼないと言えるでしょう。
もちろん仕事の性質上、100%とは言い切れない部分もあります。
次に残業についてですが、民間企業の場合はムラがあり、早く帰っている企業もあれば、遅くまでかかっている企業もあります。
一方、発注者支援業務では19時が平均的な終業時間となっています。
業界全体を見ると、時代の流れと共に残業は減少傾向にありますが、現状ではまだまだ民間企業の方が残業時間は多い傾向にあります。
発注者支援業務の発注者は”役所”にあたるため、勤務ルールについてはより厳しい面があります。
このことも発注者支援業務の残業時間が少ない理由の一因になっているかと思います。
労働基準法とは
労働基準法とは、労働者を保護することを目的とし、労働条件の最低基準を定めた法律のことです。
主に、次の項目に関しての最低基準が定められています。
- 労働契約
- 賃金
- 労働時間
- 休日および年次有給休暇
- 安全および衛生
- 災害補償
- 就業規則
- 罰則 など
36協定とは
36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定のことです。
次に労働基準法36条を引用します。
第三十六条
使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。
つまり36協定とは、法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働者に労働をさせたい場合に、使用者が労働者と結ぶ協定のことを指します。
しかし、そうなると労働者が無制限に労働を課される可能性も出てきてしまいます。
よって時間外労働には”月45時間・年間360時間”という上限も別途定められています。
5. 発注者支援業務と民間で担当する工事の違い
民間企業の施工管理の業務にあたる場合、通常担当する工事は1件のみになります。
並行して複数の現場を見るということはまずありません。
よって、担当現場の現場事務所へ出勤し、現場を確認し、終わったら帰るという流れになります。
民間企業の場合は基本的に毎日同じ現場で常駐するので、滞在時間も必然長くなります。
仕事内容も測量、写真撮影、出来形管理、職人との打ち合わせなどさまざまです。
逆に発注者支援業務の工事監督業務は、5件~10件の工事を並行して担当するケースが一般的です。
よほど大規模な工事を除いて、担当が1件だけということはまずありません。
昔は1人で30件もの工事を担当する時代もありましたが、今はそこまで極端な事例はないかと思います。
発注者支援業務は並行して複数の工事を監督するので、各現場ではあまり長く滞在しません。
平均的な滞在時間は約1時間~2時間です。
仕事内容も状況の把握・確認、段階確認など検査をすることがメインとなります。
現地で何か作業することはないので、滞在時間が必然短くなるのですね。
複数現場を見るためには、それくらいのスパンでなければ追いつかないため、1つの現場に半日~1日滞在するといったことはまずありません。
出来形管理とは
そもそも出来形とは、工事目的物のうち、すでに完成した部分を指します。
出来形管理とは、直接測定や撮影記録を通じて施工状況を確認し、発注者の意図通りに目的物が仕上がっているか調査することです。
・直接測定による出来形管理
設計図と実測を比較・記録し、管理基準値に対する相違度合を管理します。
・撮影記録による出来形管理
工事完了後、確認できない部分の出来形や、出来高数量および施工状況等、施工段階ごとの進行過程を写真によって確認します。
6. 発注者支援業務と民間の実際の仕事内容の違い
最後に、発注者支援業務と民間企業の仕事内容における決定的な違いを解説します。
それは、発注者支援業務の場合、”職人と接することがまずない”ということです。
これは建築でも土木でも変わりません。
民間企業の場合、施工管理業務はある意味職人との調整がメイン業務になります。
たとえば鉄筋コンクリートの建物を建造する際は、型枠を作るために鉄筋を加工→生コンクリートを流し込むといった、工程があります。
そのために各職人の日程の調整をしたり、現場の段取りを整えたりするのが施工管理の仕事です。
発注者支援業務の場合は施工体制で職人の作業チェックすることはあっても、指示をしたりやり取りをしたりということはありません。
国土交通省の『発注者支援業務など説明資料』においては、「工事監督支援業務に携わる者は工事受注者に対して指示、又は承諾を行ってはならない。あくまでも、工事受注者に対する指示、承諾は発注者が行います。」とされています。
発注者支援業務が業務上で関わるのは主に、代理人、管理技術者、主任技術者、それから元請け業者の職員といった人達です。
この点に関しては皆さん、さまざまな意見があるかと思います。
なぜなら、職人とのやりとりは”工事物をみんなで作り上げていく”醍醐味を感じられる最も大きな要素でもあるからです。
よって、職人とのやり取りにやりがいを感じる人や、チームとしての連帯感を感じたい人にとっては、発注者支援業務は少し物足りない印象になってしまうかもしれません。
最後に、本記事で紹介した発注者支援業務と民間業務の勤務の内容を表にまとめます。
民間企業 | 発注者支援業務 | |
勤務地 |
|
|
勤務時間 |
|
|
休日・残業 |
|
|
担当する工事の数 |
1件 |
平均5~10件 |
仕事内容 |
|
|
この記事の内容は以下の動画で解説しています。
理解を深めたい方はこちらの動画もご覧ください。
この記事の続きは以下の記事になります。