発注者支援業務・工事監督の仕事内容は?17年の経験者が徹底解説
「発注者支援業務と工事監督のそれぞれの仕事内容は?」
「民間の工事監督から役所側の発注者支援業務に転職した感想は?」
工事監督と発注者支援業務は、工事に関わるという点では同じですが、役割が大きく異なります。
今回は、工事監督を20年、発注者支援業務を17年行っている佐藤さんに話を伺いながら、民間の工事監督から役所側の発注者支援業務に転職して感じたギャップや仕事内容を紹介します。
目次
1. 工事監督と発注者支援業務両方を経験した佐藤さん(仮名)の経歴・仕事について
今回インタビューする佐藤さん(仮名)の職歴を紹介します。
工事監督から発注者支援業務に仕事を変更した理由や、担当している企業名をお話いただきました。
始めは、地元である千葉県の民間の建設会社で土木工事の現場監督として20年程度勤めていました。
その後、民間ではなく役所側で働いてみたいという思いが芽生えたため仕事を変え、現在は株式会社ライズにて発注者支援業務を17年ほど行っています。
発注者支援業務では主に国土交通省とNEXCOを担当しています。
国土交通省の案件は、道路:一級河川=6:4で、NEXCOはほとんどが高速道路の案件です。
補佐という立ち位置ですが、専門知識やスキルが必要なこともあります。
昔は、官公庁が発注する際に生じる業務はすべて公務員である技術職員が行っていました。
しかし、業務が多く技術職員の負担が増大すること、民間に雇用を増やすこと、官公庁の人手不足などから発注者支援業務が誕生しました。
東日本大震災など自然災害の復興や老朽化の整備等の影響で増えている業務です。
発注者支援業務とは、国や都道府県などの官公庁が発注する公共事業の発注業務をサポートすることです。
具体的な業務内容は、資料の作成や検査をするために現場へ調査に行くことなどです。
国が管理している河川のこと。
全国で109水系が指定されています。
2. 民間から役所の仕事に移って変わったこと
民間側として現場監督を務めていましたが、役所側の発注者支援業務に転職した佐藤さんだからこそわかる、想像とのギャップや大変なことを伺いました。
一言で表すと、カルチャーショックがありました。
現場監督は、本当に現場だけを見れば良いのですが、発注者支援業務の場合、働いてる現場の方々と、発注者側(役所側)の仲の取り持ちをしなければいけないという点は、入ってみて驚きました。
国土交通省の場合は、「出張所」というところが工事を見る最前線の部署なのですが、そこの役所側の方たちと施工する工事会社の間に入り、調整やマネジメントするのが大変でした。
工事会社側は「モノ」を作るということに集中してれば良いですが、発注者支援業務の場合、技術畑の話だけでなく、人間関係がさらに加えられるのが辛かったです。
民間側に戻ろうと思った時もないとは言えませんが、『やってみると面白い仕事』なので、現在も続けています。
仲立ちをするのに苦労しますが、それがうまくいき工事が終わった段階での達成感が非常にあります。
民間と発注者支援業務の違いとして、通常民間の仕事であれば、土木工事を2つ以上見ることはないため、1つの現場を専任で行うことになります。
応援で人が来ることはありますが、代理人、管理者、主任技師者の場合は、基本的に専任で監督しなければなりません。
現場に入ると1日中現場と事業所を往復して見る形です。
しかし、発注者支援業務の場合は、複数の現場を同時に見る必要があります。
私は現在2人体制でやっていますが、工事を6本抱えています。
これからまた同じくらい工事が発生するため、年間で10本以上は見ることになります。
したがって、2人でやっているから1人あたり半分、年間15本の工事が出たとすると1人で年間7~8本を担当することになります。
ちなみに、17年前は正直、1人で20本くらい抱えていました。
今はその部分は変わりましたが、だからといって10本見るというのも大変です。
3. 1つの工事に対して現場に行く頻度
1つの工事に対して現場に行く頻度は、繁忙期とそうではない時があるので一概には言えませんが、同時進行で重なってくるときは、毎日現場に行っています。
段階確認ではない時も、状況把握のために行きます。
段階確認は、今はだいぶ簡素化されてきていますが、それでも1工種に1回はあります。
昔は、基礎の床付け40mピッチで段階確認をしていました。
今は河川工事など、長い場合だとそういった区切りがありますが、ボックスカルバートの場合、1構造物単位で確認が必要です。
盛土工事で2億弱の規模の場合、600m程度で段階確認があります。
しかし、ボリュームによりけりで、盛土メインで構造物があるという場合は、半分の300mで段階確認があることもあります。
所要時間は確認事項にもよりますが、 1~2時間の状況の確認や段階確認のような検査を確認し移動します。
4. 現場に行く際の滞在時間
現場に行く際の滞在時間は、確認事項にもよりますが、最低でも1時間はかかります。
配筋確認など、重要な事項がある場合は2時間程度です。
大体1~2時間の状況確認や段階確認の検査を行い、移動するという形です。
鉄筋コンクリートで造られた建物工事の際に、鉄筋の配置や鉄筋を組み立てることを指します。
配筋の配置は、「配筋図」というものに示します。鉄筋コンクリートの各部材ごとに背筋の方法は異なります。
5. 書類チェックの電子化と対応方法
書類関係の業務は、施工会社が出してきた書類のチェックがメインです。
今は紙媒体の書類は少なくなって、多くは電子化されています。
書類チェックの手順を大まかに説明すると、まずはメールでデータをもらい、中身を確認して「ここはこうではないか」「ここはなぜこうなっているのか」等の話を進めたり、添削をしたりします。
そして、完成形ができたら「情報共有システム」の中に格納します。
実際のやりとりはメールが多く、メール内容を技術員がチェックして、その後役所の職員に見せて職員の方々からのチェックが入ります。
ワンデーレスポンスは正直できていません。
工事受注者から質問や指示依頼がある場合、できる限りその日のうちに解決することです。
その日のうちに対応ができない場合は、回答日を予め伝えておきます。
工期が1日でも延びると損失が発生するため、業務効率の向上や後期の短縮、コスト削減などのために行われます。
このような電子での対応は、紙媒体の時と変わらないどころか、手間が増えました。
電子の場合、お互いの顔が見えないため、お互いの伝えたいことがハッキリと書かないと伝わりません。
実際に会ったら良いのにと思うかもしれませんが、電子で行うのは移動時間の割愛や、コロナウイルス対策として電子で行っています。
相対するとしてもついたてが必要になるため、煩わしいところがあります。
ある程度完成形が見えたら、その資料をもとに役所の人とやりとりをします。
役所の人は隣の隣くらいに座っているため、対面で「すみません、お時間あればお話ししたいんですけど」というようなお声がけで相対でやっています。
つまり、役所と私は対面ですが、業者と私のやりとりはメールなど電子です。
何本も工事が走っている中で、同時に相対で対応できるのは1人までなのでメールでもらっておくと、「とりあえず見ておくよ」という形でどんどん仕事が回っています。
立会書類ではない、「施工計画書」や「品質証明資料」などは電子で対応できます。
施工計画書とは
工事現場の安全性や効率性を向上させるために予め作る計画書のことです。
施工計画書は、工事開始日の3週間前までに提出しなければなりません。 施工計画書の必須項目として、下記が挙げられます。
- 工事概要:工事名や工事場所、金額などの概要を書きます。
- 計工程表:施工順序や、工種に分けて施工期間を記載します。
- 現場組織表:現場の命令形等、業務分担等、組織の構成を記載します。
- 指定機械:設計図書で定めた機械の名称や台数、規格などを記します。
- 主要船舶・機械:指定機械以外の機械の情報を記します。
- 主要資材:工事で使う資材の品名や数、規格等を記載します。
- 施工方法:工種の施工方法や順序を詳細に記載します。
- 施工管理計画:品質や工程など、工事全般に関わる管理方法を記載します。図表を用いることもよくある。
- 安全管理:事故防止に関係する事項や、安全管理組織、現場内の点検整備を記します。
- 緊急時の体制及び対応:事故や災害は起きた時の連絡体制や、資材や設備の体制等を記します。
- 交通管理:現場周辺の交通安全、規制方法、過積載防止対策などを記載します。
- 環境対策:公害が起こらないよう、騒音や振動への対処法を記載します。
- 現場作業環境の整備:現場や事業所の環境整備に関する計画を記します。周辺環境に合わせて内容を変えることが求められる。
- 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法:建設副産物の処理の仕方や、再生資源の活用方法を記します。
他にも、「安全・訓練の活動計画」などを入れることもあります。
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