【発注者支援業務とは?】経験者が仕事内容や公共工事発注のプロセスを解説!
「発注者支援業務ってどんな仕事をするの?」
「発注者っていったい誰のこと?」
建設業界ではあまり知られていない「発注者支援業務」という仕事。
この記事では発注者支援業務の実務経験を30年以上持つ経験者が以下の点についてわかりやすく解説します。
- 発注者支援業務の仕事内容
- 発注者とは誰を指すのか
- 公共工事の8つのプロセス
この記事の内容を理解して発注者支援業務について理解を深めましょう。
目次
1. 発注者支援業務とは
発注者支援業務とは、その字の通り「発注者」を「支援」する業務のことを指します。
しかし「発注者」と言われてもピンと来ない方が多いでしょう。
発注者支援業務の仕事内容について説明する前に、まずは発注者が誰なのかを確認していきましょう。
発注者とは誰か
発注者とは、公共工事の発注をする人を指します。
つまり平たく言うと「お役所」のことです。
民間ではありません。
お役所と言っても範囲は広いのですが、最も多いのは国土交通省です。
その他の省庁では農林省や防衛省なども含まれます。
次に多いのがNEXCO(旧・日本道路公団)、UR住宅機構(旧・住宅公団)。
あとは都道府県や政令都市といった自治体です。
発注者支援業務とは、このような公共工事を発注する人達を支援することです。
具体的な仕事内容については次のパートで解説します。
発注者支援業務は土木系の仕事?
発注者支援業務は、その特性から建築系の業務として捉えられることがあります。
しかし公共工事では、道路や橋、下水道などを扱うので、建築よりは圧倒的に土木工事の仕事の方が多くなります。
こういった点から見ると、発注者支援業務は土木系の仕事と言えるかもしれません。
2. 公共工事の8つのプロセス
発注発注者支援業務とは、公共工事を発注する人達を支援する業務とお伝えしました。
その公共工事にも、発注→完成→維持・管理と複数の工程があり、付随する業務もさまざまなものがあります。
公共工事の発注プロセスについてはいろいろな見方がありますが、よく言われるのは次の8段階です。
- 調査・測量
- 用地確保
- 設計
- 積算
- 入札
- 施工
- 検査
- 管理
こちらでは市道や県道、国道などの「道路を作る」という例でそれぞれのプロセスを見ていきましょう。
プロセス1. 調査・測量
道路の計画があったら、まずは道路を作る土地の測量や地質の調査をしなければいけません。
地盤はどうなのか、土地の地形はどうなっているのか、その地質の調査や測量を行い、現状を踏まえつつ設計していきます。
プロセス2. 用地確保
国や県といった自治体の公共工事になってくると、土地(事業用地)を確保しなければいけないので、土地の用地買収も必要になります。
もし予定地に家や民間の田んぼ、畑、工場などがあった場合は、その人たちを移転させなければいけません。
したがって取得する土地建物を評価し、移転費用の算定・補償をすることも仕事の1つです。
プロセス3. 設計
次は図面の設計です。
ここに道路を作るとしたら、道路幅は何mにするのかといった設計を図面に起こしていきます。
ただただ道路を作ればいいのではなく、途中で川があれば橋をかけるといったことも考慮しながら行います。
プロセス4. 積算
積算とは、建設工事に必要な費用を事前に算出することです。
工事を発注するにも、予算がわからなければそもそも発注はできません。
よってこの工事には5000万かかる、1億円かかるという風に積算をします。
【積算業務の具体的な内容】
積算においては、まず設計図や仕様書をもとに使用する材料や数量を計算し、材料費を算出します。
それから電気代などの諸経費、作業員の人件費などを考慮した上で必要な工事費を総合的に導いていきます。
予算は工事の受注をも左右するので、積算業務は非常に重要な仕事です。
主にデスクワークになりますが、高い計算力はもちろん、建築資材の相場や建築工事の工程・工法、専門用語など、専門性の高い知識が必要とされます。
プロセス5. 入札
積算をして費用がわかったら、その工事を入札にかけます。
「予算5000万円で、100mの道路を作る」と概要を発表すると、複数の工事会社が応募してきます。
「うちがやりたい」「うちならこうできます」という風に入札してくるので、その中から最適な業者を選定します。
【入札の意義】
公共工事は税金を財源とするので、よりよい工事目的物をできるだけ安価で得ることを目標としなくてはなりません。
そのため公共工事を発注する際は、不特定多数の希望者から最適な建設業者を選出するために入札が行われます。
あらかじめ入札参加者を限定する場合や、入札を行わず特定の事業者に決定してしまう場合もあります。
特に地域の活性化を促したい場合などは後者のケースが多いようです。
いずれの場合も公平性と透明性が重視される点は変わりありません。
【入札の種類】
入札は主に3種類の方法があります。
①一般競争入札
入札情報を公告して参加者を募集し、競争によって契約者を選定する方法です。
「一般」と名が付いている通り、基本的に入札はすべてこの方法で行われます。
参加資格がある企業であれば、たとえ業務未経験であっても入札に参加できます。
海外の事業者も参加できるため、より安価でよりよい契約ができる点がメリットです。
②指名競争入札
発注者が参加者をあらかじめ指名し、指名された事業達で競争を行って入札する方法です。
参加者が限定されている時点でやや平等性にかけるので、あくまで例外的な場合のみ行われます。
しかし一般競争入札と違って、参加者の募集期間が不要であるため、発注者にとっては時間短縮のメリットがあります。
参加者の方も、ライバルが少ないことや、発注者の目的がわかりやすいというメリットがあります。
③随意契約
競争入札の方法をとらず、任意で事業者を決定する方法です。
複数の事業者を指定し、コンペなどの形で競争をしてもらう場合もあります。
随意契約は公平性や透明性に反した契約方法であるため、限られた条件下のもとでしか認められません。
主には、目的物が特注である場合や、災害などで緊急を要しており、入札を実施する時間的余裕がない場合などです。
プロセス6. 施工
ここで工事の工程に入っていきます。
入札で選定された建設会社やゼネコンが受注し、実際の作業に移っていきます。
【ゼネコンとは】
「General Contractor」の略で、総合建設業者のことを指します。
建設会社と違うのは、ゼネコンが下請各社に各工事を振り分け、施工全体を管理・コントロールしている点です。
ゼネコンが元請業者で、その下に実務を担当する各建設会社や土木会社があると考えるとイメージしやすいでしょう。
プロジェクトのすべてを総合的にマネージメントしています。
プロセス7. 検査
工事が終わると、依頼した工事をきちんとやってもらえたのかどうか、チェックする工程があります。
【検査の意義】
検査は、発注者が工事の完成通知を受け取った日から14日以内に実施しなくてはなりません。
検査の基本的な流れは次の通りです。
- 監督職員等から統括説明
- 書類検査
- 現地検査
また検査時には工事成績評定を同時に行います。
これは今後工事を発注する際の参考資料として活用される他、成績評定を受注者に通知することにより、受注者自身の技術的な指導に繋げるためです。
つまり検査の目的には、工事目的物の品質確保だけでなく、受注者の技術力向上および建設業界全体のレベルアップという側面があります。
【検査の方法】
工事請負契約が適正に守られているかを確認するために、書面と現地での検査を実施します。
①書面検査
工事発注時に明示した契約書や設計書、仕様書、施工計画書、品質管理表、出来形管理図、工事写真などの書類に基づいて、施工状況の検査を行います。
②現場検査
受注事業者の配置技術者と共に、現場にて工事の実施状況の検査を行います。
設計図面や出来形管理図などの書類に基づいて、工事目的物の出来形、品質、出来ばえなどを確認していきます。
プロセス8. 管理
道路が完成した後の補修メンテナンスも必要です。
「轍(わだち)ができてしまった」「アスファルトが痛んできた」といったことに対応し、打ち換えなどの舗装を随時行っていきます。
そのために問題点がないかパトロールすることも業務の1つです。
【轍(わだち)とは】
轍(わだち)とは、「車輪の跡」のことです。
日本の道路は大きく分けて、アスファルト舗装とコンクリート舗装の2パターンがありますが、国道の約90パーセントがアスファルトを採用しています。
アスファルトには弾性があるので、スムーズに車両が通っていけばすぐに元の形状に戻るのですが、渋滞が発生し、じわじわとクルマの重みが掛かると粘弾性という性質によって変形が生じます。
これが轍の原因です。
特に路面温度が高くなる夏や、車が停滞しやすい交差点などは轍が発生しやすくなります。
【打ち換えとは】
打ち換えとは、道路舗装の工法の1つです。
工法の中には既設舗装の上に新設を被せる「オーバーレイ」などもありますが、「打ち換え」は既設舗装を重機で取壊、撤去した後に新たな舗装をする工法のことです。
道路舗装は4つの層(表層(ひょうそう)、基層(きそう)、路盤(ろばん)、路床(ろしょう)から成り立っており、打ち換えではこちらの表層部分だけを新たに舗装する「表層打ち換え」や、路盤まで剝ぎ取ってから舗設する「全層打ち換え」などの種類があります。
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